自然に勝る科学なし。

牡蠣(カキ)

「牡蠣はからだに良い」と古来から言われていますが、私たちの健康づくりにどう役立つのか考えてみました。

世の中は、まさに健康ブーム。
地球規模の大気汚染や環境破壊、電子機器の電磁波、食品添加物、生体リズムの乱れ、ストレス、、、

そして「抗酸化」「抗糖化」「活性酸素」「アンチエイジング」など、次々とマスメディアから報じられる様々な健康に関するキーワードであふれ、人々を切実な健康志向に向かわせています。

そこで、「牡蠣」。

注目されるのには確かな理由があります。古来より「からだに良い」と言われている「牡蠣」が、あなたの現在と未来こ健康に、どう役立つのかまとめてみました。

「牡蠣」の歴史は意外に古い

「牡蠣」の歴史は意外に古く、1万年以上前から世界中で食べられ、人類は「牡蠣」が大好き!

日本では、縄文時代の貝塚から、たくさん「牡蠣」が見つかっています。貝塚は、1万年にも及ぶ私たちの先祖の食べ残した貝殻の山で、その中で一番多く発見されているのは「牡蠣」なのです。シジミでもアサリでもないのです。

私たちの祖先が、食べ続けてきた「牡蠣」。その品質は1万年の歴史が証明しています。

漢字で書くと「牡蠣」。これは中国から伝わった漢字で、「蠣」の一字で「かき」を意味します。

なのに、「牡」(オス)という漢字が使われているのは、中国では昔、「牡蠣」にはオスしかいないと思われていたからなのです。

 英雄、カキを好む

「牡蠣」は、歴史上の英雄たちにも好まれ、珍重されてきました。ローマ帝国のジュリアスシーザー、フランスの英雄ナポレオンは、戦場でも「牡蠣」を食べ続け、“鉄血宰相”と呼ばれたドイツ帝国の初代首相ビスマルクは一度に175個、文豪バルザックは144個の「牡蠣」を平らげたといわれています。

日本人では、武田信玄の「牡蠣」好きが知られており、江戸時代の儒学者、頼山陽は「天上天下、牡蠣独尊」と、「牡蠣」の美味を称えています。彼らの並外れたパワーの源は「牡蠣」にあるのかもしれません。

世界で注目!神秘的な「牡蠣」の生態

「牡蠣」は世界中の河口などに生息しています。川が森の栄養を海に運び込み、「牡蠣」の餌となるプランクトンを育てています。「牡蠣」はプランクトンを食べるために、1日400リットル(500mlペットボトル800本分)もの大量の水を飲み込み、吐き出し、海を浄化しています。そのため、牡蠣養殖は、餌が不要で残った餌で海を汚すこともない環境に優しい食糧生産法であり、地球温暖化や人口増加による食糧危機の救世主として、世界中で熱い注目を浴びているのです。

女性に嬉しい美養食

「性温、味甘。脾胃の鬱熱を去り、

 汗を止め、渇を治し、酒毒を消し、

 婦人の気血を収め、

 久しく食すれば人の顔色を美麗にす。」


『日養食鑑』より

約400年前に編纂された漢方の古典書『日養食鑑(にちようしょくかがみ)』には、「身体の血行を良くし、温める性質があり、消化機能の働きを助ける。寝汗を止め、のどの渇きを取り、二日酔い・悪酔いを防ぐ。イライラやストレスを解消し、婦人病にも有効であり、肌を美しくし、きめ細やかにする」と紹介されています。

「牡蠣」は身体が必要とする自然バランスの栄養補給で、女性の美しさのために必要なベースを軽えてくれます。その代表的なものが基礎代謝のアップ。血液の流れをスムーズにして、全身に栄養素を補給していきます。

肝腎カナメの「牡蠣」

「牡蠣」が肝臓に良いことは、古くから知られています。二日酔い防止に、「牡蠣」が良いとされてきたのは、「牡蠣」に含まれる栄養素が、アセトアルデヒド(アルコールによって体内で変化・発生する毒物)の解毒作用、亜鉛による肝臓酵素の活性化に関与し、「牡蠣」のタウリンをはじめとする、良質なタンパク質などの栄養成分の相乗作用により、肝臓の働きをサポートするためなのです。

肝臓は体内の化学コンビナートのような、複雑で重要な役割を担っています。しかも、医療工学の進歩により、人工臓器や生体のあらゆる器官を代行してくれる時代にはなりましたが、肝臓の働きをすべて再現することは不可能だといわれています。肝臓は無口な働き者。少々の故障で苦痛を訴えたりせず、最大限の再生能力を発揮しようと努力するのです。

現在、栄養欠乏や生活環境の劣化、飲酒や服薬により肝臓に負担が増していますが、ますます注目される牡蠣の栄養は、肝臓の働きを助け、“全身の健康”に幅広く働きます。

「牡蠣」の成分は「海」の栄養縮図?

「牡蠣」の栄養成分は、他の貝類や食物に比べて、なぜここまで豊富なのでしょうか。

「牡蠣」は、主に淡水と海水が混じり合う河口などの「汽水域」に生息しており、アサリやシジミやハマグリなどとは違い、岩に定着すると、移動することなく、一生を同じところで過ごします。そのため、貝柱以外にほとんど筋肉がなく、体内に栄養を蓄えます。そして、どんな熾烈な環境下にあっても、じっとそこに留まることで、海のあらゆる栄養素を吸収して蓄え、活性酸素にも負けない、強靭な免疫力さえも持つことができたのではないでしょうか。

さらに「牡蠣」は、環境状態の変化によって

自らの性を転換してしまう、ミラクル機能も備えています。

「牡蠣」という天然の生物の中で保たれた栄養は、その多様性、相互バランス、相乗効果作用等、人為的に模倣することは不可能です。

人間の身体にほんの少しだけ…・。でも絶対に必要な栄養のことを微量栄養素(ビタミン・ミネラル)と呼んでいます。その中でも特にクローズアップされている「亜鉛、銅、マグネシウム」等の微量ミネラルは、生活習慣病予防に効果を発揮する成分として、ますます重要視されています。

現代人はなぜミネラル不足

ミネラルはもともと海水や土壌に含まれ、人間の身体の中で作ることはできません。私たちは、土壌で育つ植物やそれを食べる動物、ミネラル豊富な海で育つ魚介類を食べることで、ミネラルを摂取します。

しかし、現代は、加工食品やファーストフードなどの「食の偏り」、「医薬品の常用」、「食品添加物」によって、ミネラルを摂取する以上に消耗し、不足しがちなのです。日本の土壌はもともとミネラルが少なく、生産性を上げるために化学肥料や農薬を使うので、ますます土壌にミネラルが少なくなり、年々野菜の栄養も少なくなっています。たとえ、昔ながらの食事をしても、ミネラルをバランスよく摂取することが難しくなっています。

「牡蠣」には身体を変える力がある

ビタミン、ミネラル、アミノ酸をバランス良く含んでいる「牡蠣」ですが、グリコーゲンも多く含んでいます。「牡蠣」の貝柱が殻を閉じる力は、グリコーゲンパワーによるものです。

グリコーゲンは、貯蔵エネルギーとして、筋肉、肝臓に蓄えられ、細胞分裂や増殖、赤血球の活性化、肝臓の機能を高めます。肝臓に貯蔵されたグリコーゲンは、どの臓器よりもエネルギーを消費する脳に糖質が少なくなるとブドウ糖に変換して送られます。肝臓の次にグリコーゲンが多いのは骨格筋で、体力は蓄積されたグリコーゲンの量に比例します。

タウリンとは、牡蠣、タコ、イカなどに多く含まれる含硫アミノ酸の一種です。

人間の筋肉や脳、心臓や肝臓などの臓器に多く含まれており、体内では充分な量が合成できないので、食事から摂取するのが望ましいといわれています。

タウリンには、体温や血圧、血糖値などのバランスを保とうとする働きがあります。また、心臓から出て行く血液の量を増やし、心筋の収縮力を高めてうっ血性心不全を防ぐ働きもあり、心不全治療のための医薬品や目薬の成分としても使われています。

現在、人間の身体に必要だといわれているミネラルは、29種類あり、その中でも、亜鉛に関する研究が盛んに行われ、最も注目されています。

300種類以上の酵素の構成成分である亜鉛は、正常な細胞分裂に不可欠なミネラルで、新陳代謝を促進し、皮膚や髪、爪に潤いを与え、ツヤを増し、健康に保ちます。

活性酸素を消去する酵素の働きを強め、免疫機能や味覚を正常に保ち、ウイルスの侵入を防ぐ働きもあります。

また、各種ホルモンの分泌や調軽に必要で、女性ホルモンや男性ホルモンが正常に機能するために欠かせません。女性らしさ、男性らしさを保ち、生殖能力にも影響を与えます。
このように、亜鉛は性別にかかわらず、重
要なミネラルなのです。

亜鉛は足りていますか!

健康に必要な栄養素を考える時、亜鉛などの微量ミネラルはそれほど重要視されていませんでした。

しかし社会環境、生活習慣病などの問題が時代とともに深刻化し、本来は非常に大切な栄養素であったことが分かってきたのです。

厚生労働省が「日本人の栄養摂取基準」として、亜鉛や銅、鉄、セレン、マグネシウムなどのミネラルの重要性を認め、基準値を掲載したのは2000年4月から。

特に「亜鉛」は体内での栄養の産生や合成、補酵素として300以上の仕事を受け持っているのです。

ですが、亜鉛はもともと吸収されにくいうえに、さらには「フィチン酸」や「リン酸塩」などの食品添加物が食感の良いパンや菓子類、加工食品や冷凍食品、飲料などに幅広く使われており、ミネラルの吸収を阻します。ストレスや年齢を重ねることも亜鉛不足を招いてしまうので、日頃から充分補給することが大切です。

「牡蠣」の亜鉛含有量は可食部100g中14.0mgで、通常の食品でこれほど多く含むものは他に見当たりません。

栄養豊富な食べ物の代表選手、ダントツの1位なのです。

「牡蠣」には、ビタミンA、E、Be、B1eなどが合まれています。

ビタミンAは、目や肝臓の働きに関わりが深く、粘膜や皮膚の形成に欠かせないものであり、ビタミンEには、過酸化脂質の生成を防ぐ働きがあり、老化防止に力を発揮します。

ビタミンB6は欠乏すると、貧血や皮膚炎、成長の遅れなどを引き起こし、ビタミンBi2も貧血の予防に重要で、末梢神経の傷を修復する作用もあります。

このように、栄養素にはいくつも重複する効能
があることにお気づきですか?

たとえば、タウリンも亜鉛もビタミンAも目の機能を正常に保つために重要な働きをします。
様々な栄養素が、確かなアプローチで何重にも身体に働きかけることになるのです。

その結果、「牡蠣」に含まれる膨大な栄養素が、複雑に影響し合い、オーケストラのように身体の中で響きあいます。

「牡蠣」には、まだまだ知られざる力が秘められているのです。

ミネラルの不足と身体の不調

おまけ

牡蠣には水質を浄化する働きがあります。